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徒然なるままに #4.5

2016/06/29 修正

音のない夢の中。どことなくいびつな世界。

雨が降っていた。

怪我を負って、涙を流す。

一体俺が何をしたっていうんだろう。何も悪いことなんてしていないのに。

慟哭。叫びは誰にも届かない。

どこで間違えたんだろう。

俺には、分からなかった。

雨が強くなる。

いびつだった世界が、正常を取り戻す。

再び目を覚ますと、もう夜の8時を回っていた。

リビングに向かう。夕飯の匂い。喉が渇いたから、お茶を入れて飲む。

家族と一緒に食べる。

テレビでは、最近話題の映画のプロモーションをしていた。

食べ終わって、歯を磨く。シャワーを浴びる。部屋に行って、寝る。

おやすみなさい。

昨日見た夢を思い出す。

あんまり夢は覚えていないほうだけど、昨日の夢ははっきりと記憶に残っていた。

心の奥底で、寂しさが燻る。孤独感。

胸が苦しくなる。助けて欲しい。

手を伸ばす。その手は誰にも届かない。

「結局、君は助けてくれなかったよね」

彼女のことを思い出す。

もしかしたら、彼女もどこかで同じ苦しみを味わっているのかもしれない。

そう考えると、とてもやるせなくなった。

心の奥底で燻った寂しさは、あっという間に成長した。

辛くて、寂しくて。助けて欲しいと願えば願うほど孤独を感じる。

孤独を感じると寂しさが大きくなる。その繰り返し。

今まで何も出来ていなかった無力感に襲われる。

寂しさと合わさって、心が軋む。

そうするともっと助けて欲しくなった。

負の感情が際限なく広がっていく。

それに覆われていると、何をしていても寂しくなった。

考えないように、色々なことを試した。

でも考えないようにするというのはそれのことを考えるのと同義だ。

何にも集中できないから、何もせずぼんやりとすることが増えた。

夜寝る時間も自然と早くなった。

どう頭を使っても寂しくなるから、頭をできるだけ使わないようにすること。

それが唯一の対抗手段だった。

2日後。ぱんこさんから通話がかかってくる。

「なんか前、マスター病んでたけどだいじょうぶー?」

優しい声。手が差し伸ばされる。

耳元で誰かが囁く。

その手を掴んで、全て吐き出してしまえ。そうしたら楽になれる。縋り付いてしまえば、苦労することはなくなる。お前が苦労する必要なんて、ないだろう?

甘い言葉。誘惑。この2日間で膨らんだ孤独が今も心を蝕んでいる。

早く楽になりたかった。

全てを吐き出してしまおう。

誰かが囁いた。

本当にそれでいいのか?今までを考えてみろ。差し伸ばされた手は。掴んだその手は全部。最後には突き離された。また同じ苦しみを味わいたいのか?その優しさが永遠に続くなんて、誰が言ったんだ?

誰かが囁いた。

お前のその孤独を、彼女に支えさせていいのか?今まで何もしてこなかったお前が。

一丁前に人の支えを借りていいのか?他人に迷惑をかけてまで生きていたいのか?

「・・・いや、大丈夫ですよ。解決済みです」

結局、俺はその手を取れなかった。突き放されるのが怖かった。

他人に迷惑をかけるのが怖かった。

「そっかーそれならよかったんだー」

のほほんとした声。心の底が、ズキリと痛む。

違うんだ。まだ何も解決なんてしていないんだ。

今も孤独が膨らんで、心がじわじわと弱っていってるんだ。

何で、助けてくれないんだ。

そこまで考えて、自分が嫌になる。

彼女は助けようとした。その手を払ったのは自分自身なのに。

自分のことを、嫌いになりそうだった。

あの夢から、変わったことがあった。

人に助けを求められなくなった。

突き放されるのが怖くて。何の役にも立てていない自分が、他人に迷惑をかけるのが嫌で。

でも孤独は膨らんで、助けて欲しい気持ちもどんどん強くなる。

矛盾。否定しあう2つの気持ちは、心をどんどん傷つけていく。

助けて欲しいけど、誰にも助けて欲しくない。

夜、寝れなくなった。ベッドの中で1時間ほど微睡み続ける。

その間にも、心は弱っていく。

早く夢の中へ。

何も考えずに済む、楽園へ。

ようやく眠りに落ちる。

でも、それから3時間も経つと目が覚める。

起きて時計を確認して、もう一度夢に逃げ込もうとする。

それでも、やっぱり眠れなくて。しばらくしてやっと眠る。

そして、それから少しして目を覚ます。

逃げられない。すぐに捕まってしまう。

睡眠が足りていないからか、心が弱ってきたからなのか。

1週間もすると、頭が働かなくなる。

平日はまだマシだった。周りに人がいたから。何が書いてあるのかも理解出来ない白板を、ノートに書き写していれば時間が進んでいく。

家に帰ったらベッドに逃げこむ。起きてご飯を食べてシャワーを浴びて、再び夢の中へ。それで1日が終わったから。

土日は、まさしく地獄だった。

何をしようとしても手がつかない。

頭の中では常に孤独がつきまとっていて、無視をするには大きすぎた。

仕方がないから昼寝をして時間を進めようとする。それでも、眠り続けることは出来なかった。

頭が狂いそうだった。いっそ狂ってしまえばいいのに。

その結果、見たくもない自分の心と向き合うことになる。

どれだけ顔を背けようとしても、出来なかった。

目を覆うことも、耳を塞ぐことも出来なかった。

どうしたら、俺は助かるんだろう。

こうして苦しんでいる間にも、時は止まらず進み続ける。

常に一定のペースで、全ての人から平等に過ぎ去る。

時の流れは残酷だった。

流れた分だけ、俺の心を傷つけた。

それでも、この流れに身を委ねて、時間が解決してくれるのを待つしかないのかもしれない。

思考は加速していく。

本当に、時の流れは解決してくれるのか。

分からない。でも分からないものに頼るのは怖かった。

何を探しているんだろう。

誰にも迷惑をかけたくなかった。離れていくかもしれないから。

孤独を埋めてくれる存在が欲しかった。

惜しむことをなく愛を捧げてくれる人型のロボット、なんてものがあればきっと飛びついていただろう。

だけどそんなものはない。

全てを捧げて助けてくれる人を求めた。

それなら、きっと迷惑をかけても許してくれる。そんな甘えた考え。

そんな人は存在しない。それくらいわかっている。

存在しない物を探し求めるのは疲れるし、無意味なことだ。

それだって分かってる。

それでも、探し続けた。求め続けた。

音楽をかける。

"I wake up from a nightmare Where we had our best days And wonder where it has gone wrong"

楽しかったことを思い出す。小学生の頃の、友達の家で遊んだこと。

中学生の時に行った夏祭り。ゲームで、ギルメンと一緒にボスを倒したこと。

楽しかった記憶は、剃刀のように鋭く噛み付いてくる。

考えたくなくても、今と比べてしまう。

この糞みたいな日々と。

どこで間違えたんだろう。

全てが間違いだったような気もするし、何も間違えてはいなかったような気もする。

考えてもわからなかった。

あの日々はどこに消えたんだろう?

どれだけ欲しがっても、帰ってくることのない日々。

暖かな思い出は、俺を苦しめるだけの刃になってしまった。

"Save me"

やり場のない気持ちが、心の中で暴れる。

声にならない悲鳴が、頭の中をぐるぐると回る。

言葉は外に出さないと誰にも伝わらない。

俺の苦しみは、誰にも気付かれることはなかった。

人に心配をさせたくなかったから、よく作り笑いをするようになった。

笑っている人を心配する人はそんなにいない。

気を使わせないよう、いつも笑っているとその表情が張り付いて取れなくなる。

これで、より人に助けを求められなくなった。

いい感じだ。

スタンフォード監獄実験というものがある。

普通の人が特殊な肩書きや地位を与えられると、その役割に合わせて行動してしまう、ということを証明する実験。

実験を始めて時間が経つに連れ、被験者たちは役割に沿った人格を持ち始めたらしい。

人間なんて、結構単純な生き物。

心が軋んで、悲鳴をあげる。

ニッコリと微笑む。俺は大丈夫だよ。

孤独に飲まれて、もがく。

ニッコリと微笑む。俺は大丈夫だよ。

誰かに縋り付きたくなる。

ニッコリと微笑む。俺は大丈夫だよ。

ニッコリと微笑む。俺は大丈夫だよ。

強引に誤魔化し続ける。言い聞かせ続ける。

俺は大丈夫だよって。

あれから、1ヶ月ほどが経った。少しだけ気持ちが楽になってくる。

人間は、孤独にすら慣れることが出来るらしい。

決して、寂しくないわけじゃなかった。

手を差し伸べられると今でも縋りたくなる。

誰かと楽しく話をした後は、今でも寂しかった。

でも、他のことが出来るようになったし、夜も少しだけ深く寝れるようになった。

結局、時の流れが解決してくれたという事なんだろう。

少し安心して、少し悲しかった。

時の流れは残酷で、優しかった。

久しぶりに本を読む。

昔好きだった本。

今読むと、心に強く響いた。

思わず胸が痛くなるくらい。

「誰かに愛されたくて、苦しんでる人にやっちゃいけないこと」

まるで自分のことが書かれているようだ、と自嘲する。

「それは、その人のことを、受け入れようとすること」

「最後まで責任を取れないなら、やさしさなんてないほうがマシなんだよ」

全くもってその通りだと思う。

中途半端な優しさは、その人に何の助けにもならない。

最後に心を傷つけてしまうだけだ。

「強くなってもらう、か、線を引いてあげる、か、すべてを捧げる、か」

―――それが正解。

強くなったのかもしれない。そう思った。

今でも全てを捧げて、助けてくれる誰かがいるかもしれない。

なんて夢を見ている。

でも、前までのように。1人で立てないわけじゃなくなっていた。

本を閉じて、目を瞑る。

これから先も辛いことはたくさんあるだろう。

でも、それを乗り越えて人は強くなっていかないといけない。たとえひとりぼっちでも。

頑張らないとな、なんて思った。

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