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勇者山本一樹(26) #4

[鋲付き装備] 鋲が打ち込まれた皮の装備 皮の装備の柔軟性と重量の軽さを維持しつつ 鋲が防御効果を増している 制作難度が低く値段も安価なためありふれている そのため山賊や盗賊などがよく身に着けている [魔法使いのローブ] 夜の絹糸で織られたローブ 魔力が少し増える 過去は高級品とされていた夜の絹糸も 魔物から下位等級品の生産が可能となった その結果過去に使われていたものより性能は落ちたが 一般層に普及するようになった ダイジェスト終わり。 俺、魔法使い、戦士の3人で冒険をすることになった。 まあ、道中で仲間が増えるかもしれないし。 「よし、それじゃあ行くぞ!」 「・・・」 「・・・」 冷めたパーティだ。 足を踏み出して城門から外に出る。 「勇者さま、何か冒険に出る前に一言気合を入れようではないか」 「そうだよ山本一樹!これから旅が始まるんだしさぁ」 さっき言ったじゃん・・・。 イベントが始まる手前だったらしい。 「匂いの付かないムシューダー」 「流石勇者さま!こちらも滾ってくるというものです」 「へぇ・・・意外と言葉上手なんだねっ」 こいつら耳ついてんのか。 これだと俺のモチベーションがだだ下がる。 それなりにまともなことを言うようにしておこう。 萎える。 「よし、それじゃあ行くぞ!」 「・・・」 「・・・」 先行きが不安だ。 フィールドに出る。 広大な草原。道が続いている。 奥の方には森が見えた。 風が吹く。草木がさらさらと揺れる。 ふんわりと、花の香り。風に乗ってきたんだろうか。 そして、もう1つ見えるものがあった。 魔物だ。 あの青いプルプルはスライムだろう。 練習にはうってつけだ。 「うおおお!」 鞘から剣を引き抜いて斬りかかる。 『戦闘開始!』 いい仕事するじゃんイケボのおっさん。 スライムの体を斜めに斬り下ろす。 二撃目・・・は触れなかった。 体が勝手に後ろに下がる。 『スライムの攻撃!』 ちょ、あれ、体動かない。 「ぴぎー!」 腕に噛みつかれる。いてえ。 「こ、このっ離せっ」 腕をブンブン振って引き剥がす。 これはもしかして。 『山本一樹はどうする?』 やっぱり。 このゲーム、ターン制だ。 とりあえずスライムに斬りかかる。 というか呪文とか覚えてないし。 あ、薬草買い忘れた。 上手いこと剣が当たんない。 端の方をスライスして終わる。 『魔法使いのターン!』 「天と地の盟約において炎の精霊に命ず!我が怒りの炎で闇の使徒どもを焼き尽くせ!」 おお、強そうだ。 メラガイアーとか出てきそう。 「小火球!」 野球ボールくらいの炎の玉がスライムに飛んで行く。 ぽん、と音を立てて弾けた。 ・・・え、あんな詠唱文強そうなのに。 しょぼい。 『戦士のターン!』 俺たちの中で1人だけレベルが高い。2だけど。 背負っていた大剣を引き抜く。 磨かれた刀身に太陽の光が反射する。 そして、一気に距離を詰め振り下ろす。 それだけ。 刀身は見事にスライムの芯を捉えていた。 プルプルした体が弾け飛ぶ。 強い。 『スライムを倒した!』 『それぞれ6の経験値を得た!』 『3ゴールドを手に入れた!』 体が勝手に動いて、落ちている体の残骸を巾着袋にねじ込む。 『スライムゼリーを手に入れた!』 アイテムの取得は自動でやってくれるらしい。 どれが使えるかなんて分からないからありがたい。 ・・・すっかりここの世界に馴染んできてるな。 なんか複雑な気持ち。 改めてステータスを確認し直す。 思ってたほどダメージを受けてなかった。 所詮はスライムってことか。 剣をしまう。 本当は血を拭いたりだとかいると思うんだけど、そこはゲームの世界ってことで。 刀身は綺麗なままだ。 そこらで見かけた弱そうな敵を片っ端から狩る。 レベル上げは徹底的にやるタイプだ。 改めて考えるとターン制で良かったかもしれない。 立ち回りとか無理。 ただ、敵の攻撃をただ待つのだけは怖いからやめてほしい。 いや、そうするしか無いんだけど。 「ふぅ・・・そろそろかな」 結構な数の戦闘をこなしてきた。 いや、まあ敵はしょぼいんだけど。 いくつか分かったことがある。 一つ、自分のターンの時、制限時間はないらしい。 ただ、それなりに派手な動作をすると勝手にターンが進む。 ラジオ体操のうち、深呼吸は許された。 屈伸はダメだった。 二つ、仲間は自動行動しか出来ない。 さくせん的なものはないみたいだった。 ちょっと不便。 そして、三つ。これが一番の難点だった。 特技とか、呪文を使うときは自分でそれっぽい動きをしなくてはいけない。 これが困る。もちろん詠唱文とか知らないし。 今はまだ、小回復魔法とためるくらいしか出来ないけど、今後はやぶさ斬りとかどうすればいいんだろう。 26のおじさんには厳しい動きである。 それでも、頑張るしかないのだ。 あと、ついでに四つ目。こいつら全く喋らない。 よって旅の途中は、人と一緒にいるのにずっと静かだ。 なんか気まずい。 そろそろレベルも良い感じに上がったし、次の目的地を目指す。 どこか知らんけど。道なりに進めばなんとかなるっしょ。 しばらく進むと道のはずれに、なんかいた。 でっかいクワガタみたいな奴。 ペットにしたい。 この歳になってもクワガタとカブトムシはロマンだ。 これは誰にも譲れない。 足音を殺して、忍び寄る。 がさがさ。 パーティメンバーは気を使ってはくれなかった。 気付かれて、戦いが始まる。 『くわがた魔神が現れた!』 ・・・なんとも言えない名前だ。 そしてこいつ、立ち上がりやがった。 器用に二足歩行している。 『くわがた魔神の攻撃!』 どんな攻撃をしてくるんだろう。 やっぱり角を使ってくるんだろうか。 ちなみにあれ、角じゃなくて顎って言うのが正しいんだぜ。 「魔の精霊に命ず!我が前に立ち塞がる人間共を喰らい尽くせ!」 「中魔弾!」 え。 白い光の弾が飛んで来る。 腹に見事に当たる。めっちゃ痛いんだけど。 慌てて体力を確認すると、半分以上削られてた。 これは無理っすわ。 『山本一樹たちは逃げ出した!』 あれはやばいわ。 声めっちゃかっこよかった。 初心者殺し要員だ。 勝ち目がない敵からは逃げるに限る。 おとなしく道なりに進むことにしよう。 歩き始めて、数分で次の村が見えた。 ずっと国の周りでふらふらしてたから、普通に進んだら20分弱で来れた距離。 ~Pueblo de inicio~ あのおっさん国際色豊かだ。 何語だろうか。 「ここはPueblo de inicioだよ」 どこだよ。 「ここはPueblo de inicioだよ」 違うんだ、なんて言ってるのかわかんないんだ。 村の入口御用達の、地名を話し続ける村人の隣に看板が立っていた。 『Pueblo de inicio』 ぷ・・・ぷえぶろ、で、いにしょ? 分からん。村だ。 始まりの村、とでも名付けようか。 あまり広くはない、かと言って狭くもない村だった。 それなりの数の建物もあるし、あの奥に見えるのは村長の家だろうか。でかい。 川と畑と走り回る子供。のどかな景色だ。 新しい土地に来たら、とりあえず。 最初にやることは一つしかない。 パリン。 ドカン。 パリン。 カパッ。 村の中のありとあらゆる全てのツボと樽を叩き割り、宝箱とクローゼットを覗いてきた。 結果、見つかったのは。 薬草3つと30ゴールド。あと鍋の蓋。 あまりにもしょっぱい。 これをどうしろっていうんだ。 まあ、一応バッグには仕舞っておくけどね。 アイテム収集が終わったら、次は情報集めだ。 「んー?困ってることぉ?特にねえなぁ」 「村長さんが解決してくれますから・・・」 ふぅむ。この村の村長はどうやら人望に厚い方らしい。 しかし、何もイベントがないというのも困る。ゲームの進行的に。 「あのな!俺のクワガッタンがどっか逃げちゃったんだよ!」 村の端でオロオロしていたガキンチョ。 一瞬あの悪魔が頭をよぎる。 「どこ行っちゃったのかなぁ・・・そんな遠くには行ってないと思うんだけど・・・」 ハハ、マサカネ。 よろず屋のおじいちゃんに声をかける。 「村長か?俺と同じくらいの爺ちゃんだよ」 「あいつ子供もこさえないで、跡継ぎはどうするつもりなのかねぇ・・・」 あの広い家に一人暮らしをしているらしい。 それはなかなか、住むのも大変そうだ。 あらかた情報集めも終わったし、村長の家っぽいところに向かう。 あんまり有益な情報なかったけど。 「勇者さま、ですか?申し訳ございません、村長はただ今留守にしておりまして・・・」 メイドさんが出てきた。 一人暮らしってなると掃除とか、大変そうだもんな。 20歳前後といったところだろうか。かわいい。 ショートカットがよく似合っている。 「多分、裏の畑に行っているのだと思うんですけど・・・」 そこに行け、ということだろう。 メイドさんに礼を告げて、裏の畑とやらに向かう。 家の裏には、森が広がっていた。 そして、その草木の間に細い獣道。 青々と茂る草を掻き分けながら先へ進む。 幸い、距離は短かった。 その道を抜けた先には。 「おおー・・・」 黄金の小麦畑。 風が吹き抜けると、小麦がさらさらと揺れる。 畑の合間を縫うように、小さな川が流れていた。 水面に陽の光と黄金の小麦が反射して輝く。 森の一部を切り開いたんだろうか。辺りは木に囲まれていた。 すげえ綺麗だ。 そして、畑の真ん中に1人の爺ちゃん。 あれが村長だろうか。 ぐねりと曲がった背筋。 木の杖にしがみつくように立っている。 ・・・あれで畑仕事出来るんだろうか。 ん? 奥から何かがやってくるのが見える。 丸太のような何か。 あれ、魔物じゃね? やばいじゃん!

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